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2010年6月29日火曜日

コラム:digital divideという差別

 人間社会には、その進化の過程に応じて様々な差別がある。例えば、古来より最も長く続いてきたのは、女性差別と身体障害者差別であろう。この2つは、人間社会が進化するにつれて、少しずつその激しさを減じてはいるけれども、なくなることはない。江戸時代には、士農工商エタ・非人といわれるように、部落差別が生まれ、現代でも続いている。また、学歴差別、宗教差別、出自による差別、職業差別、病による差別と、差別をあげればきりがない。ただ、ここに挙げた差別の多くは、それが「差別」と認識され、無くしていく方向に向かおうというコンセンサスがその社会である程度図れている点で救いがある。勿論、現在もこういった差別に苦しんでいる人がいることは否定しない。
 現代社会で、いま静かに進行し、「差別」として認識されていない差別がある。それがタイトルに挙げた「digital devide」(デジタルディバイド)である。現代社会では、「富」を得るためにもっとも必要とされるのは、「情報」である。株取引一つを取り上げても、ある会社に関する情報を握っている人間がもっとも有利な取引ができるのは明白だ。その情報を得る手段が、パソコンやインターネットなどのデジタル機器を必要とするものに、すごい勢いで移りつつある。いわゆるマス・メディア(テレビ・新聞・雑誌など)の情報は、はっきり言って古いのだ。情報としての価値はあまりない。
 みなさんは、不思議に思ったことはないだろうか?どうして自分はいつも行きたいライブのチケットを電話で予約しようとしてもできないのに、あの人はいつもチケットを手にしている、それも随分前の段階で。その答えは、デジタル機器の操作性、いわゆるメディアリテラシーの高さによるのである。
 大変閉鎖的で、選民思想にも通じるので、私は嫌いなのだが、現代社会は確実にデジタル的格差社会である。そして、この格差社会の厄介な点は、利益を得ていない人間がその不平等性を主張することはまずない、ということだ。なぜなら、「情報を得られない」イコール「本人の努力不足(あるいは知識不足)」として片づけられてしまうからだ。これは、市場経済、あるいは資本主義社会の「弱肉強食」主義と全く同じである。つまり、自己責任、ということだろう。
 現代社会では、「誰もが平等」というスローガンのもと、小学校では運動会に1位を決めない学校もあるそうだ。しかし、こんな見せかけの「平等主義」の下で、新たな差別社会は着々と肥え太っているのである。この社会に真の平等など存在しない。なぜなら、人間一人ひとりが生まれ持った能力はそれぞれ異なるし、家庭環境、本人の努力する能力、趣味、興味の対象など、いわゆる「個性」と言われているものは個人によって異なるからである。「個性」…なんと便利な言葉であろうか。「パソコンが使えない」「お金がない」「やる気がない」…こういったネガティブな側面まで、この「個性」という言葉は引き受けてくれる。そして、私たちが努力する理由を奪い取っていく。
 この差別をなくすために取れる唯一の方法は、「教育」である。ベタだが、これしかない。小学校から、「情報教育」、特に、自分の必要とする情報をどのようにして手に入れるのか、その方法論を徹底的にたたきこむべきだ。でなければ、日本は、一部の「情報エリート」とその他大勢の無知蒙昧な「情報難民」に分かれ、「情報エリート」による富の占有化がますます進むだろう。
それでいいのだろうか?私はいいとは思わないが。

2010年6月28日月曜日

映画日記:和製タランティーノ! 『シーサイドモーテル』 2010/6/27(日) シネリーブル神戸

監督・脚本:守屋健太郎 主演:古田新太 生田斗真 麻生久美子 小島聖 山田孝之 玉山鉄二 成海璃子 池田鉄洋 温水洋一 音楽:Your Song is Good 主題歌:ラナウェイ シャネルズ

いやあ、勘だけで「おもしろそう!」と思って観たんですが、これがもう当たり中の当たり!超おもしろかったです!

映画を見るときは、タイトル、ポスターの雰囲気、出演者、監督なんかで、観るかどうか決めるのですが、これを見る決め手になったのは、やはり古田新太さん。古田さんは、劇団新感線の看板役者であり、またご自分でも”ネズミの三銃士”というユニット(池田成志さん、生瀬さん)を主宰し、去年宮藤官九郎さん脚本の「印獣」(三田佳子主演)という凄い舞台をされました。また、テレビドラマでも活躍されており、私の大好きな役者さんのお一人です。
古田さんの感性を信用しているので、古田さんの出ている映画はもう絶対おもしろい!古田さんを見れるだけでも、映画を見る価値がある!と思って観たのですが…。もう和製タランティーノ!!!

タランティーノの映画を始めてみたのは、多分"PULP FICTION"だったと思うけど、あの時に感じた衝撃と同じものを感じました。タランティーノの映画は、その脚本、カット割り、音楽、役者の起用まで、彼独特のこだわりが徹底しており、一見何の脈絡もない、別々のストーリーが、複雑に絡まり合い、終盤へ向けて一気に同じゴールへと向かっていくときの、あの爽快感が堪らず、大ファンなのですが、この映画にも同じこだわりがあります。

映画の舞台は、シーサイドモーテルという、うらぶれた田舎のモーテル。おそらく東海か、関東北部と思われる、木々以外にはなにもない(勿論海も!)辺鄙な場所にそのモーテルはあります。
モーテルの雰囲気がたまらなくいい!古くてボロボロなんだけど、70's~80'sのアメリカのインテリアって感じで、懐かしいようなおしゃれな内装。登場人物が来ている洋服の色彩感覚も抜群!

物語は、そのモーテルのそれぞれの部屋で繰り広げられる、それぞれのお客の人間模様をちょっと冷めた、コミカルな視点で描きます。タランティーノの映画と同じように、嘘・裏切り・暴力・殺人・セックスといった、いわゆるおこちゃまにはちょっと…的な場面も多いのですが、まあ、おこちゃまはディズニー映画でも観とけばいいんじゃないすかね?これは大人のための、大人の娯楽映画ですからね。

ストーリーはあってないような感じなんですが、それぞれのエピソードや台詞がもうとってもおもしろい!原作があるそうなので
買って読んでみたいと思います。いやあ、でも、この守屋さんという監督、すごい人ですね!必ず巨匠と呼ばれるようになる!と確信しました。

役者の方々の演技も素晴らしく、特に麻生久美子さんの小悪魔的デリヘル嬢は良かった!麻生さんも大好きな女優さんです。この方はほんとに幅広い役をこなされますね~。

この映画は見とかないと損しますよ!ぜひ映画館に足を運んでください!!!